2009年8月26日水曜日

整理

今日から3日間、留学生向けのオリエンテーションが始まり、ようやく新学期に向けた準備が本格化してきました。
でもオリエンテーションや新たな友人のことについて書く前に、渡航前に自分が思い描いていた、というか心酔しきってたマイノリティー精神というものとエストニアでの現実を一度文章に書こうと思います。この1週間で混乱した心と新たに得た考え方を整理した方が、きっと今後の生活のためになるだろうなと思います。

僕にマイノリティー精神の種を植え付けたのは、昨年の8月、早稲田大学の短期留学プログラムで行ったカナダのユーコン準州での経験と出逢いにあると思います。グリズリー、ヘラジカなどの生息するカナダの原野で、食糧、調理器具、テント、寝袋、衣服など総重量20kgのザックを担いで1週間アウトドアリーダーシップ研修を受けました。その経験自体は僕の登山への興味を掻き立てたのですが、むしろそこで出逢った人々の生き方に精神的に大きな影響を受けました。単身ユーコンを訪れ、この地で14年もの歳月をすごす日本人のヨシさんは、アラスカへ行きたいという夢を求めて日本を飛び出し、今では立派なユーコンの住人として流暢な英語で現地の人とアウトドアライフを満喫していました。早稲田大学OBで、この留学プログラムに1日だけ参加してくれたカヌーイストの野田知佑さんは、自然で遊ぶことを心から楽しんでいて、何か社会に対する反抗心みたいなものをプンプン匂わせていた。一人でユーコン川を漂流し、先住民との交流や、グリズリーに追いかけられた話など、僕の冒険心を掻き立てた。インストラクターとしてプログラムに参加したアメリカ人のジェイクはイラク戦争での従軍経験を持つ。戦争の現実を目の当たりにして軍隊を離れ、何かを求めて自然に立ち向かっている。若干24歳にして、大自然の中で逞しく生きていく威風堂々としたその姿は、都会の生ぬるい環境に生きる自分には絶対手に入れることのできない何かを発していた。

少し話が長くなったが、彼らの考え方、生き方に大きく心を揺さぶられた僕は、日本に帰ってからも映画"Into the Wild"を観て、小説「荒野へ」も読んでどんどんこっちの世界に傾倒していった。まぁ、自分だけじゃなく若い人にはよくあると思うけど、心を揺さぶられる経験や出会いを持つと、その人の考え方や行動を真似たくなる。自分も次第に何かに付けて反抗的になっていったし、大学や組織というものが嫌いになっていった。周りの人と同じことをすることに嫌気が差し、もちろん人それぞれの理由があることは分かっているが、周りの人と行動を合わせる人を軽蔑していた。エストニアを留学先に選んだのも、誰も選ばないから、以外には何も理由がない。たくさんの学生が行くアメリカ、イギリスなどには絶対行きたくなかった。こんな考え方の自分が馬鹿らしくもあったが、同時に誇らしくもあった気がする。

僕の大好きなロックバンドGreen Dayの"Minority"と"Castaway"という歌はこの価値観を強烈に後押しした。"Minority"は「少数者」、"Castaway"は「漂流者」という意味で、当時の自分の心境にぴったりの歌だ。多くの人が、言語の壁や、少数のアジア人として事件に巻き込まれる可能性など心配してくれたが、独りでもやっていけると信じ切っていた。

だがエストニアに来てみれば、もう徹底的に打ちのめされた。完全に自信を失った。ちょっと前のブログにも書いた、マイノリティーになることの裏の意味を(いやむしろこの意味でのマイノリティーが表側なんだろうけど)軽視していたことによる孤独感。夜寝ている時は幸せで、朝起きると1日が始まるのが嫌でしょうがなかった。自分には、"Castaway"で歌われているような、未知らぬ地で一人だけで生きていくような逞しさも、知恵も、忍耐も何にもなかったということが良く分かった。自分が恥ずかしくなった。

Castaway - going at it alone(漂流者 一人で進むしかない)
Castaway - now I'm on my own(漂流者 自分一人なんだ)

I want to be the minority.(僕はマイノリティーになりたい)
I don't need your authority.(君の権威なんかいらない)
Down with the moral majority.(道徳上のマジョリティーに反対だ)
'Cause I want to be the minority.(僕はマイノリティーになりたいんだ)

あれだけ聞いていた詩に感動しなくなった.....

でも、独力で生きていく以上に素晴らしい生き方も見つかった。家族、友人、現地の人や大学の関係者、様々な人に支えられ助けられて生きていく。昔の自分なら、この価値観の変化を単に「敗北」としか見なさなかっただろうし、そういう風に捉える人もいると思う。でも、そんなのどうでもいい。支えてくれる人の優しさに気付けたことが何よりも重要だ。

独力で生きている人はやはり素晴らしいし尊敬するけど、どんなに弱く頼り無くても、自分を支えてくれている人がいることに気付き、その人たちに感謝できる人、そういう生き方をする人の方が、今の自分には魅力的に映る。

愛読書のひとつ「荒野へ」の主人公クリスは、アラスカの荒野で一人誰にも気付かれず死んで行く間際、日記にこうのような一節を残している。

"幸せは誰かと分かち合ったときに本物になる..."

長くなったけど、これからはこの気持ちを大切にして生きていこうと思います。

自分の心情を綴っても読んでくれる人は「こいつ何言ってるの」って思うだろうから、明日からはなるべくタルトゥや大学のことについて書ければと思います。

1 件のコメント:

  1. 久しぶり~
    わかるかな?
    Aliceのさよならパーティーで会ったよね♪
    なんだか早速苦労してるみたいだね。
    私も日本人がいない所に行くぞ!!って
    ずっと意気込んできたから、苅田くんのブログ読んで
    なんだか考えさせられたよ。
    正直不安になったけど、同時に私もがんばらなくちゃっ!!
    って思えたよ:) ありがとう!

    私にできることなんてないかもしれないけど、
    応援してるよ★がんばって(>u<)b
    1年後にはエストニアが第二の故郷になってるはず☆

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